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透析

ドライウェイト(DW)の基礎から決め方まで。こんな症状なら再検討!

こんにちは!臨床工学技士ゆうです。

透析ではドライウェイトという概念がとても重要になります。

  • ドライウェイトって何?
  • 決める基準は?
  • 何をもって再検討するの?

という疑問に答えます。

 

Contents

ドライウェイトとは何?

ドライウェイト(dry weight:DW)とは、英語をそのまま訳すと乾いた重さ…。

なんのこっちゃーい。

まぁまぁ。DWは透析患者さんにとって基準となる体重の事で、必須の概念です。

 

DWは何を表しているの?

透析患者さんは腎臓の機能が落ちているため尿が出にくく、水分が体に溜まっていきます。

ですので透析前は体重が増えて来院される場合がほとんどです。

その患者さんの余分な水分が溜まっていない状態の理想体重をDWと呼んでいます。

 

DWはなぜ必要なの?

透析患者さんの体には余分な水分が溜まっています。

透析ではその余分な水分を除去しなければなりません。

しかし、一体どこまで水を除去したらいいのか…毎回手探りというわけにはいきません。

そのためDWという基準となる体重を決め、DWを目標に今日はどれだけ除水するか検討しています。

例えば、透析前の体重が60kgの患者さんのDWが58kgだった場合、除水しなければならない水の量はどれだけでしょう。

余分な水が60-58=2なので、2kg除水しなければなりませんね。

 

DWはだれが決める?

DWを決めるのは医師です。

問診・症状・血圧・心胸比・採血結果など様々な項目を見ながら、その人に合ったDWを決めます。

 

DWはいつ決める?

DWは透析を始めるタイミングで決めます。

ただ、最初のうちは手探りです。

仮のDWをまず決めて、除水をかけていきながら患者さんの状態をみて調整していきます。

 

DWは一度決めたら変更なし?

いいえ、DWは変動するものです。

患者さんの食欲が増え、余分な水分ではなく体自体に肉がついてきたら、それに合わせてDWも上げていく必要があります。

逆パターンもあり、体が痩せてきたらDWも下げていく必要があります。

 

DWの決め方

DWは患者さんをぱっと一目見ただけで決められるようなものではありません。

様々な検査と患者さんの状態を見ながら慎重に決めています。

DWを決める要素として以下のようなものがあります。

  • 心胸比
  • hanp
  • 血圧
  • むくみ
  • 諸症状(嗄声・下肢つり・息切れ・呼吸苦)

ひとつずつ見ていきましょう。

心胸比(CTR)

心胸比(CTR)とは胸部レントゲン検査で調べられるものです。

胸郭の幅における心臓の幅の割合のことで、基準値は男性50%以下、女性53%以下です。

心胸比が高値ならDWを下げる、低値ならDWを上げる検討をする

 

hanp

(human atrial natriuretic peptide:

ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)

”ハンプ”と読みます。

これは心臓の心房で合成・貯蔵され血中に分泌されるホルモンです。

心房筋の伸展によって分泌され、循環血漿量が多くなってきた時に高値を示します。

透析患者さんでの基準値は50~100pg/ml以下。

ただhanpは心疾患の重症であるほど高値を示すので、これだけで判断できない場合があり注意が必要です。

hanp高値の場合はDWを下げる、低値の場合はDWを上げる検討をする

 

血圧

血圧を求める式があります。

血圧=循環血液量×末梢血管抵抗

つまり、循環血液量が多くなるほど血圧は高くなる傾向があるのです。

循環血液量が多くなるとは、血管内に余分な水分が溜まっているとも受け取れます。

透析後も血圧高値が続く場合はDWを下げる、逆に血圧低値が続く場合はDWを上げる検討します。

 

むくみ(浮腫)

むくみは血管外に水分が溜まった状態です。

皮膚をぐっと押してその跡がなかなか戻らなければむくみがあります。

透析前は手足や顔など様々な場所にむくみがある場合が多いですが、透析後は改善される場合がほとんどです。

透析後でも改善されないようならDWを下げる検討をします。

むくみが著明・透析後もむくみがある場合はDWを下げる検討をする

 

嗄声(声枯れ)

嗄声は”させい”と読み、”声がかれる”ことを意味します。

体内の水分が減ると嗄声が起きやすく、透析後に割とよくある症状です。

続く場合は除水をしすぎている可能性があり、DWを上げたりします。

嗄声が続くならDWを上げる検討をする

 

下肢つり(こむら返り)

下肢つりは透析中や透析後に起きやすい症状です。

血管内の水分量が少なくなると起きやすく、DWを検討する前にまず1回の透析での除水量が多すぎないか検討します。

体重増加が多く1回の透析で引く水の量が極端に多いとプラズマリフィリング(血管外→血管内への水の移動)が追いつかず、下肢つりや血圧低下が起きます。

下肢つりが起きる→まずは除水量が適正か確認→後半の除水量を減らしたりDWを上げる検討をする

 

呼吸苦

体内に余分な水分が増えすぎると肺にも水が溜まり、呼吸苦の症状が出ることがあります。

呼吸苦の原因が水分量増加ならすみやかな除水で改善しますが、透析後も続く場合などはDWを下げる検討をします。

 

こんな症状なら再検討

以下に検査結果や症状におけるDWの変更検討基準をざっくりまとめました。

様々な指標を見ながらDWを決定します。

DWアップを検討 変更なし DWダウンを検討
心胸比 低い 基準値内 高い
hanp 低い 基準値内 高い
血圧 低い 基準値内 高い
むくみ ない ある
嗄声 ある ない
下肢つり ある ない
呼吸苦 ない ある

 

まとめ

DWについて大事な要素をまとめました。

DWは状態によって変動するものです。

透析スタッフは日々の透析の様子や患者さんの訴えを聞いて、DWの再検討を医師に相談することも必要です。

 

参考:「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン2011-日本透析医学会」